冷却水を一定の温度に保つサーモスタット
エンジンを回転させると、熱が発生しエンジンの温度がどんどん高くなっていきます。
エンジンが高温になると、シリンダーやピストンなどが焼きついて故障する、混合気の燃焼で異常が発生するなど、エンジンが正常に働かない危険があります。
このため、バイクにはエンジンを冷やす機能が取り付けられています。
バイクのエンジン冷却機能には空冷式と水冷式の2種類がありますが、最近では殆どのバイクが水冷式エンジンを採用しています。
空冷式エンジンは空気でエンジンを冷やす仕組みで、水冷式エンジンは冷却水でエンジンを冷やします。
サーモスタットとは、水冷式エンジンの温度を一定に保つための調節装置のことです。
エンジンを冷やすために、バイクにはラジエータというパーツが取り付けられています。
このラジエーターの内部には冷却水が入っており、ラジエーター内を冷却水が循環することで、エンジンの温度を下げているのです。
ラジエーターで冷やされた水は、ホースを通ってエンジン内の水路を循環してエンジンを冷やすのです。
そして、エンジンとラジエーターの間にあって、冷却水の関所となっているのがラジエーターなのです。
エンジンが冷えているときは、冷却水でエンジンを冷やす必要はありません。
むしろ、一定温度までエンジンの温度を上げる必要があります。
このため、ラジエーターへと続く水路を閉じてしまいます。
逆にエンジンが高温のときは冷やす必要がアリスから、ラジエーターへの水路を開いて水を流して冷却して温度を調整しているのです。
サーモスタットは、一般的には水温が60℃近くになると弁を開き始めます。
弁の開く度合いは65℃で10%、70℃で30%、75℃で60%、80℃で90%、そして、83℃になると100%の全開となり、ラジエーターに最大限に冷却水を引き込んで循環させます。
エンジンは一定の温度で最もよく働くように設計されており、最適な温度は水温で80℃くらいとされています。
このため、エンジン始動後しばらくはラジエーターは働かず、水温が60℃程度に温まってから作動し始めます。
言い換えれば、水温が60℃まで上昇しなければ、ラジエーター内に冷却水が流れないというわけです。
サーモスタットが温度を感知する仕組みは、膨張と収縮によるものです。
温度が上がるとサーモスタットが膨張して、冷却水が通すための道を開きます。
そして温度が下がると、収縮作用で元のサイズに戻り、冷却水の通り道を防いでしまうのです。
サーモスタットの故障には2種類の症状がある
サーモスタットが劣化などで故障すると、主に次の2種類の症状が出ます。
1つは、サーモスタットの弁が閉じたままで水がラジエーターへと流れない状態。
この場合、エンジンの温度が下がりませんからオーバーヒートしてエンジントラブルの原因となります。
もう1つは、サーモスタットの弁が開いたままで、水がラジエーター内で常に循環している状態です。
常に冷却水でエンジンを冷やすことになるため、エンジンがうまく機能せずパワーダウンを起こします。